新聞掲載記事平成30年12月

働き方改革関連法に伴う労働時間の把握義務

Q. 働き方改革関連法の施行に伴い、この4月から労働時間の把握の方法が法律で義務付けられると聞きました。詳しく教えて下さい。

A. 働き方改革関連法のなかでは、この4月1日より実施されるものとして、有給休暇の取扱いが話題となっていますが、この他に労働安全衛生法に基づく労働時間の把握の実効性の確保の義務化があります。

この労働時間の把握の方法の義務付けは、労働基準法ではなく労働安全衛生法により定められました。理由は働き方改革関連法成立の経緯で議論された過重労働による脳・心臓疾患等の発症を予防するため、労働安全衛生法に規定されている医師による面接指導制度に関し管理監督者を含むすべての労働者を対象として、労働時間の把握について客観的な方法によらなければならないと省令に規定することが適当であると議論された結果です。

省令により、「タイムカード」による記録、「パーソナルコンピュータ」等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とすることとして具体的な方法が明記されました。法制定の趣旨に基づいて対象者は裁量労働制が適用される人や管理監督者も含まれています。

企業にとって「タイムカード」や「パーソナルコンピュータ」が具体的に明記されたことのインパクトは大きいです。一方、省令では「その他の適切な方法」も可能であると明記されています。まだまだ自己申告制の出勤簿を利用している場合があるかと思いますが継続が可能か、法違反を問われるかは重要なチェックポイントになります。

この点に関しては、昨年12月28日に厚生労働省から都道府県局長あてに通達が出されました。原則を踏まえつつ、「その他の適切な方法」として「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」において、労働者の自己申告による把握が考えられるが、自己申告制の対象となる労働者に対して、自己申告制の適正な運用を含め十分な説明を行う等5つの措置を全て講じる必要があるとされています。

さらに、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」の具体例も取り上げられており、事業場外労働の際の直行直帰で、事業主の現認を含め、他に労働時間の状況を客観的に把握する方法がない場合などがありますが、この場合でも社内システムにアクセス可能である場合は対象と認められないと限定されていますので個別に確認が必要でしょう。

働き方改革関連法に関し企業の取組むべき改正は、法律毎、事業規模毎に施行時期も異なります。前もって自社の取組み予定をご検討下さい。

みくに労務管理事務所 飯島明美

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