新聞掲載記事平成28年1月

低所得者向け臨時福祉給付金

Q. 私は65歳の男性です。昨年定年退職し、わずかな年金収入だけで生活しています。報道で低年金の者に3万円支給されるのを知りましたが、どのような制度なのでしょうか?

政府は昨年11月26日に決定した「一億総活躍社会」の実現に向けた緊急対策で、アベノミクスの成果を広めるとして賃金引上げの恩恵が及びにくい低所得・低年金受給者に支援を行う、と明記しました。3万円の給付金は、消費税が17年4月に10%に引き上げられる際の低所得者の「年金生活者支援給付金」を前倒しし、民間消費を下支えすることを目的として一時金として支給されます。

対象は、公的年金受給者約4千万人のうち年金収入が(単身の場合)155万円程度以下の65歳以上の高齢者世帯約1100万人や、65歳未満でも障害基礎年金や遺族基礎年金を受給している約150万人の計1250万人です。いずれも住民税非課税世帯が条件で、生活保護受給者や母子家庭、若年低所得者などは対象外です。65歳以上高齢者向け給付金は、今年16年4月以降に支給が始まります。

障害基礎年金や遺族基礎年金受給者向け給付金は財源となる16年度当初予算案(500億)成立後、16年10月後に支給が予定されています。14年から低所得者全般に6千円を支給している簡素な臨時福祉給付金をセットにして住民登録している各自治体を介して配る方法が検討されていますが、来年17年4月から10%への再増税後は軽減税率が導入されるため廃止。代わって再増税後の17年6月から低所得の年金受給者約800万人を対象に報酬比例で最大月額5千円を加える「年金生活者支援給付金」が予定されています。

3万円の給付金は、景気がなかなか上向かず、非正規労働者が4割を超えて全ての労働者に賃金引上げの恩恵が行き届かない中、個人消費を刺激する狙いもありますが、17年4月に予定されている10%への再増税後の景気の動向に依っては流動的になるかもしれません。今年16年夏に参院選を控えており、投票率の高い高齢者向けのバラマキ政策との意見もあります。

その理由は16年4月からの65歳以上高齢者向け給付金に代わって、軽減税率の導入による財源不足から従来の低所得の子育て世代向け給付金(児童1人当たり3千円)が16年3月末で廃止されます。年収360万円未満の子育て世帯で幼児教育負担を軽減する措置を拡大したり、児童扶養手当の2、3人目の子どもの加算額を倍増する政策は評価しますが、一定の所得制限のため受給者は絞られるので子育て世帯の負担増が考えられます。

また今回の給付金は若年低所得者などには対象外なので、世代間の公平性・平等性という観点から疑問があり、現役世代の痛税感はますます高まるでしょう。今回の給付金を受給できる皆様には、10%増税後の負担を視野に入れて有効に活用して下さい。

みくに労務管理事務所  特定社会保険労務士 渡邊孝利

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