新聞掲載記事平成29年2月

社会保険同日得喪をお忘れなく!!

当社では60歳の定年を迎え嘱託社員となり1年毎に契約更新をする手続きが始まります。社会保険の手続きについて注意する点などありますか?

65歳までの継続雇用制度の義務化に伴い、定年の廃止や定年年齢の引き上げ制度を導入した企業もありますが、やはり一年毎の再雇用制度を導入するケースが多いですね。

本人が継続勤務を希望し再雇用契約が整うと、関連した手続きが必要となる場合がありますので予想される社会保険手続きをみてゆきましょう。

労働時間や給与が定年前と同様な場合は社会保険の手続きはありませんが、労働時間が少なくなった場合であり、週の所定労働時間が会社の1週間の所定労働時間の4分の3未満か1ヶ月の所定労働日の4分の3未満となったときは厚生年金と健康保険は資格喪失となります。その後60歳以上には国民年金の加入義務は生じませんが過去に国民年金の未納期間がある方は65歳までは国民年金の任意加入をして基礎年金を増やすこともできます。その際にはお得な付加年金(保険料月額400円)の加入をしておくこと良いでしょう。特に気をつけなくてはいけないのは60歳未満の扶養となっていた配偶者がある場合です。国民年金1号加入者となりますので月額約16000円保険料の負担が生じます。

また、必ず必要となるのは健康保険の切換えです。会社は社会保険の離脱証明書を交付しますが、国保と健康保険の任意継続制度の比較をするよう伝えると良いでしょう。

次に労働時間や勤務日数は4分の3未満にはならないが給与の見直しがあった場合で社会保険標準報酬月額の等級に変更が生じる場合は「同日得喪」が必要となります。

対象者は「60歳以上であること」です。以前は「特別支給の老齢厚生年金の受給者であること」との制限がありましたが年金の受給権が無くても60歳以上であれば「同日得喪」の対象になります。この適用によるメリットは大きく、例えば、定年時月給40万円(社会保険料月額約6万円)の加入者が30万円(社会保険料約4.2万)で再雇用となった場合、原則は「随時改定」になり4か月間は実賃金に比べて過大な負担(約1.8万円×4カ月)が生じる事となりますが、「同日得喪」によりを会社も加入者この負担を回避することが出来るわけです。さらに、当然ですが65歳以降でも70歳以降でも対象です。ただし70歳以降の場合は「70歳以上被用者届」も必要となります。

次にこの制度が始まった当時は定年後継続して再雇用される場合であり原則一人一回に限られていましたが、「定年以外の退職後の再雇用」や「再雇用後の契約更新等」が追加となり複数回の「同日得喪」が可能となりました。

今後は契約更新の際に手続きの漏れの無いようご確認下さい。その他雇用保険雇用継続給付の対象となる場合もありますので併せてご確認下さい。

みくに労務管理事務所 特定社会保険労務士 飯島明美

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