新聞掲載記事平成30年10月

年次有給休暇の計画的付与と取得義務化について

Q. 年次有給休暇の取得日を会社側があらかじめ決めることができる制度があると聞きましたが、どのような制度でしょうか。また、年次有給休暇取得の義務化が始まると聞きましたが、本当でしょうか。

A. 会社側があらかじめ年次有給休暇を取得する日を指定して与える制度として「年次有給休暇の計画的付与制度」があります。年次有給休暇のうち5日を超える分については、会社が計画的に付与することができる制度です。年次有給休暇のうち5日は従業員が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければなりません。例えば、年次有給休暇の付与日数が10日の従業員は5日、20日の従業員は15日までを会社が計画付与の対象とすることができます。計画付与の方法としては①企業・事業所全体の休業による一斉付与方式、②班・グループ別の交替制付与方式、③計画表による個人計画付与方式があります。業務の比較的閑散な時期に計画的に与える方法、飛び石連休の間の日や、夏期・年末年始休暇と合わせて付与し大型連休にする方法、個人付与方式では従業員や家族の誕生日、記念日を休暇とするアニバーサリー休暇制度とするなど様々な方法で活用されています。この制度を導入するには、就業規則に規定し、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります。

また、ご質問のように平成31年4月1日より年次有給休暇の取得義務化が始まります。

会社は、基準日(年次有休休暇が発生する日)に年10日以上の年次有給休暇が与えられている従業員に対して、5日取得させることが労働基準法上の義務となります。本人の希望を聞いた上で、5日取得させる日を会社が時季指定し、休ませなければいけません。ただし、従業員が自主的に5日以上取得する場合や、上記の計画付与制度で5日以上付与される場合は、会社は指定を行う必要はありません。また、5日に足りない場合は、足りない日数のみ会社が指定を行う必要があります。

法定どおり入社半年後から年次有給休暇を与えている場合は、4月1日入社の基準日は10月1日、10月1日入社の基準日は4月1日となるため、入社日の異なる従業員が働いていると、複数の基準日が発生することになります。まずは改正に向けて、各従業員の基準日や年次有給休暇の取得状況を把握し、計画付与制度を活用するなど、どのような方法で管理運用していくか検討する必要があるでしょう。

みくに労務管理事務所 児玉いずみ

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