新聞掲載記事平成25年1月

非正規雇用について

Q. 最近、メディア等で日本の雇用の問題点として「非正規雇用」といった言葉をよく耳にしますが、具体的にはどのような雇用形態のことを指すのでしょうか?

ニュースや新聞などを見ていると頻繁に「非正規雇用」という言葉が出てきます。具体的にはどのような雇用形態かというと、一般論でいいますと、契約社員や期間工、パートタイマーなどの雇用形態が該当します。また、派遣社員も非正規雇用の分類に入るでしょう。一般的には正規雇用(いわゆる正社員)は契約期間が定められていないことに対し、非正規雇用は契約期間が定められていたり、正規雇用者よりも労働時間が短かったり、また同じ仕事であっても正規雇用者よりも賃金が低いなど、正規雇用と比較して非正規雇用は労働条件が低く雇用が安定しないとされています。
日本の雇用の歴史を振り返ってみると、高度成長期は正社員を中心とした終身雇用制が特徴的でしたが、バブルが崩壊して不景気の時代に突入すると人件費の高騰化、そして固定化が企業経営を苦しめることになりました。しかし、現在の法律では正社員を切ることは非常に難しいとされています。そこで、人件費を変動化でき、かつ不景気になった際には正社員と比較して雇用調整をしやすいということで非正規雇用者が増加してきました。今では3人に1人が非正規雇用者であるといわれています。また、現代社会の問題点である少子化、あるいは晩婚化といった問題の背景にもこの非正規雇用の存在が根幹にあるとされています。
そこで国は非正規雇用者を保護するために本格的に対策を講じました。まずは今年の4月1日から施行(一部は昨年8月施行)される労働契約法の改正です。1.有期契約が通算して5年を超えた場合は本人の希望により無期労働契約へ転換できる、2.雇い止め法理の法定化、3.不合理な労働条件の禁止、の3つのルールを設け、正規雇用者と少しでも同じになるように法改正をしました。また、労働者派遣法も昨年の10月より改正されています。具体的には日雇派遣の原則禁止、有期雇用者を無期雇用への転換を推進させる措置などが定められました。本来、労働者派遣法は派遣を受け入れる会社の正社員を保護するための法律でした。わかりやすく言うと、あくまでも派遣を受け入れる業務は代替措置で、一定期間受け入れたら正社員にその業務を戻しましょうと言うのが法律の趣旨でした。しかし、今回の法律で目的に「派遣労働者の保護」という言葉が初めて明記されました。正社員保護から派遣労働者の保護へとシフトしたのが今回の労働者派遣法改正の最大の特徴です。
今後もしばらく日本はこのように多様な雇用形態で進むものと思われます。

みくに労務管理事務所 社会保険労務士 竹沢 智弘

ページの先頭へ戻る