新聞掲載記事平成25年7月

同居の親族・法人の役員の労働者災害補償保険について

Q. 私は建築業を営んでおり、私の息子を含め従業員を3人使用しております。小規模なので私自身も建築現場で仕事をしますが、経営者の私は仕事中にケガをしても労災保険の対象にならないのでしょうか?

労働者災害補償保険(以下、労災保険)は原則として労働者が業務上の事由または通勤による傷病等に対し補償します。よって労働者ではない社長さんやその同居の親族あるいは法人の役員などは労災保険の対象とはなりません。しかし、中小企業では社長さんや役員等が労働者と同じく現場作業に従事することはよくあることです。そうなると労働者の方と労災事故に遭うリスクは同じくらいになります。そのため、中小企業で一定の要件を満たせば、先の社長さんを含めた労働者とされない方についても労災保険に加入できるようにしています。これを特別加入制度といいます。ちなみに特別加入には中小事業主等(いわゆる上記のケース)、一人親方等、海外派遣者の3種類あります。万が一、労災事故に遭われた場合の給付については原則として労働者が労災事故に遭われたときと同じです。ただし、中小事業主等の場合、特別加入者と労働者とでは労災事故の取扱いが一部異なるので注意が必要です。代表的なところを以下に述べます。まずは、事業主の立場で行われる業務中の事故は労災保険の給付の対象になりません。例えば銀行に融資を受けに行く際にケガをしたケースなどです。また、労働者の時間外または休日に特別加入者が単独で業務を行っているときの労災事故も対象となりません。例えば、工期の関係で休日に現場で作業をしなければならないが、休日手当の支払いがもったいないので、特別加入している社長さん1人で現場に行き作業中にケガをしたケースです。この場合も労災保険の給付の対象になりませんので注意が必要です。ただし、休日や時間外であっても他の労働者と一緒に作業をしていたときに起こった労災事故でしたら特別加入者も労災保険の給付を受けることができます。重ね重ねになりますが、時間外や休日に特別加入されている方が現場作業に1人で従事するときは注意して下さい。

先の質問では息子さんを従業員として使用しているようですが、社長さんと同居しているようでしたら息子さんは労働者の扱いではないので、もし労災事故に遭われた場合、社長さんと同様に特別加入をしていなければ労災保険の給付を受けることができません。特別加入をしていないのであれば特別加入されることを検討してみてください。もちろん社長さんと別居しているのであれば労働者として労災保険の給付を受けることができます。

以上、原則論を述べましたが、取扱いが異なる場合もあります。詳細をお知りになりたいかたは労働基準監督署にお問い合わせ下さい。

みくに労務管理事務所 社会保険労務士 竹沢智弘

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