新聞掲載記事平成27年4月

従業員雇用後の帳簿について

Q. 会社を設立し、従業員を雇用することになりました。従業員を雇用するにあたり、会社に整えておかなければならない帳簿があると聞きましたが、どのようなものでしょうか?

使用者側は労働者を雇用する場合に、労働基準法で「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つを作成することが義務付けられています。これらは「法定3帳簿」と呼ばれ、労務管理の基本となる大変重要な帳簿です。それぞれの帳簿には、必ず記載しなければならない項目が設けられています。

  • 労働者名簿
    労働者名簿は、正社員のみならず契約社員、パートタイマーの非正規労働者についても備え付けておかなければなりません。記載事項は次のとおりです。①氏名②生年月日③性別④住所⑤業務の種類⑥雇用年月日⑦退職年月日とその事由(死亡・解雇も含む)⑧履歴(社内の人事異動歴等を記入)
  • 賃金台帳
    賃金台帳は、賃金支払の都度遅滞なく次の事項を記入しなければなりません。①氏名②性別③賃金計算期間④労働日数⑤労働時間数⑥時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数⑦基本給、手当等の額⑧賃金の一部を控除した場合はその額
  • 出勤簿
    出勤簿は、労働者の出退勤を管理するものですが、その方法は法律では定められていません。タイムカードが一般的ですが、出欠に印をつける出勤簿でも構いません。しかし、賃金台帳の記載事項⑤、⑥で労働時間数を記入しなければならないことから、会社は労働者の労働時間数等を把握することが義務付けられています。厚生労働省による通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」により、①使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること②タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し記録すること、どちらかの方法によって労働者の始業時刻・終業時刻を確認・記録することが原則とされています。例外として、この通達により規定されている措置が講じられている場合に限り「自己申告制」による始業時刻・終業時刻の確認・記録も認められています。適正な労働時間の管理は、使用者と労働者の適切な関係、および労働者の健康を維持するうえでも重要となっています。

また、法定3帳簿は事業場ごとに作成することになっていますので、本社以外に各支店等がある場合には、それぞれの支店ごとに作成する必要があります。ただし、本社で統轄してパソコンで作成をしている場合には、それぞれの事業場で、いつでも画面表示し、印刷できる状態になっていれば要件を満たしていることになります。法定3帳簿は、3年間の保存が義務付けられていますので、労働者が退職したからといって直ぐに処分しないよう気をつけてください。

法定3帳簿は、社会保険各種手続、調査の際は、必ず提示が求められます。詳細につきましては社会保険労務士事務所までご相談ください。

みくに労務管理事務所 社会保険労務士 児玉いずみ

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