新聞掲載記事平成28年5月
基本手当(失業保険)と年金の調整
Q. 私は64歳になります。現在は厚生年金に加入しながら年金を受給しています。そろそろ退職し軽作業への転職を希望しています。ハローワークへ求職の申込を予定していますが年金と調整がありますか。
60歳前後のお客様から年金のご相談をお受けする事がありますが仕事の仕方は本当に様々です。最近では65歳までフルタイムで継続される方が多くなってきていますが、緩やかな仕事に移行し趣味や家族との生活を楽しむ選択をする方、完全に退職する方等様々です。
その際、ご自分の受け取る年金と雇用保険の給付に関する事を確認しておく事は大切です。たった1日の違いで受け取り方が全然違うこともあるからです。 大まかには年齢と勤務を継続するかで取扱が変りますが、今回は年齢に関する事につてお話します。
満65歳を境に制度が変わります。老齢厚生年金は、(A)65歳未満の特別支給の老齢厚生年金(経過措置として特別に支給される年金)と、(B)65歳以上の本来支給の老齢厚生年金に分かれます。(A)65歳未満で受け取る年金は特別に支給される年金ですから、退職し失業保険(基本手当)を受給するためにハローワークに求職の申込をすると翌月から一定の期間年金が支給停止になります。
一方,(B)65歳以上で受け取る年金は失業等給付(基本手当、高年齢求職者給付金)を受けても支給停止になりません。
以上が原則ですが65歳以上でも両方支給となる場合があります。65歳前に退職した場合、失業保険(基本手当)の受給可能期間は退職日から原則1年以内です。例えばあなたが64歳と10ヶ月で退職をしたとすれば雇用保険の受給可能期間は1年経過後の65歳と10ヶ月になります。すると(B)の65歳以降受け取る本来支給の年金と10ヶ月重複する期間が生じますが、その間に受給する厚生年金は(B)65歳以降受給する本来支給の老齢厚生年金になり減額されることなく基本手当と両方受給可能となります。極端に考えると退職日の1日の違いで受給が全く違ってくることもあるわけです。
なお、64歳になった4月以降は保険料が免除となり給与からの天引きがなくなりますので、失業保険を喪失したと勘違いしている人が少なくありません。ご注意下さい。
また、障害や遺族の年金は失業保険(基本手当)との調整はありません。
最後に、(A)の特別支給の老齢厚生年金には長期加入者の特例があります。厚生年金に44年加入方への特別措置ですが嘱託再雇用のケース等では失業保険(基本手当)を上回る場合があります。事前に求職の申込をするか慎重に検討しせっかくの制度を賢くご利用下さい。勤務を継続した場合の取扱は次の機会にご紹介致します。
みくに労務管理事務所 社会保険労務士 飯島明美
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