新聞掲載記事平成28年7月
職場での熱中症対策とWBGT値について
Q. 今年の夏も猛暑と予報が出ています。職場での熱中症対策と、最近よく耳にするWBGT値について教えてください。
熱中症は一般に、蒸し暑いなかでの激しい労働や運動の影響で、体温を維持する機能が麻痺することにより発生すると言われています。昨年の職場での熱中症による死傷者数は群馬県労働局管内では12人発生しました。業種別にみると、製造業、建設業の順に多く発生したことが判明しています。また、熱中症は気温が高い屋外にいる場合に起こるとは限らないことも分かっています。
熱中症になる人の数は、気温が高くなるほど増えると考えられがちですが、実は最高気温よりも、「WBGT」の数値が高くなるほど熱中症が発生することが調査によりわかっています。この「WBGT」は、日本語で「湿球黒球温度」という意味に訳されますが、これは熱中症を予防することを目的としてアメリカで提案された「暑さ指数」という基準のことです。「WBGT」の単位は気温と同じ摂氏度(℃)を使用しますが、その値は実際の気温とは異なります。WBGT値は、「温度:湿度:輻射熱=1:7:2」の割合で算出されます。温度よりも、湿度の方が7倍も影響度が高いと見積もられ、同じ温度でも、湿度が高いほうが熱中症の危険度が大きく増すのです。また、輻射熱も温度より影響度が高く見積もられています。輻射熱とは、離れている熱源が放射するエネルギーのことを言い、私たちの体には、周囲の建物やコンクリートなどからも、この輻射熱が届いているのです。車や空調機器からの排気熱も、輻射熱にあたります。WBGT値によって、体に熱がどのくらい溜まりやすいのかを知ることができるのです。WBGTの数値は、環境省のホームページで、都道府県の地域ごとに予報値と速報値を確認することができますので、ぜひ活用してください。
また、厚生労働省のホームページには、職場の熱中症対策のチェックリストが掲載されています。
- ①WBGT値(暑さ指数)を活用していますか
- ②休憩場所は整備していますか
- ③計画的に、熱に慣れ、環境に適応するための期間を設けていますか
- ④のどに渇きを感じなくても、労働者に水分・塩分を摂取させていますか
- ⑤労働者に、透湿性・通気性の良い服装や帽子を、着用させていますか
- ⑥日常の健康管理など、労働者の健康状態に配慮していますか
- ⑦熱中症を予防するための労働衛生教育を行っていますか
- ⑧熱中症の発症に備えて、緊急連絡網の作成など行っていますか
こちらのチェックリストも併せて活用してください。熱中症は、過去の調査から7月、8月が最も多く発生しています。すでに暑い時期に入っていますので、気温の高い時には、少し仕事の内容を軽めにしたり、休憩時間を増やすなど適切な対策を講じてください。また、室内にいても熱中症になることはありますので、注意するようにしてください。
みくに労務管理事務所 社会保険労務士 児玉いずみ
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