新聞掲載記事平成28年11月

同月得喪の社会保険料取扱いについて

Q.11月1日に入社した従業員が、2週間勤務した後、すぐに退職してしまいました。この場合の社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)は、どのような取扱いになりますか。

社会保険料は、資格を取得した日(入社日)の属する月から、資格を喪失した日(退職日の翌日)の属する前月分まで徴収されることになっています。社会保険料は、月単位で徴収され、通常は資格喪失日(退職日の翌日)の属する月の保険料は徴収されません。ただし、例外として、ご質問のように、入社してすぐに退職してしまい、同じ月に資格取得と資格喪失があった場合は、1カ月分の社会保険料が徴収されることになっています。

この社会保険料のうち厚生年金保険料ついては、平成27年10月より、同じ月に資格取得と資格喪失があった場合の取扱いが変わりました。これまでは、厚生年金保険の資格を取得した後、その同月内に退職したため資格を喪失し、さらに同月内に国民年金の資格を取得した場合には、厚生年金保険料と国民年金保険料をそれぞれ納付する必要がありました。しかし、平成27年10月以降は、国民年金保険料のみを納めればよいことになりました。これにより、退職者が退職後に、同月内に国民年金の加入手続きをするか、または、転職し同月内に厚生年金に再び加入すれば、会社が徴収し、納付した保険料は還付されることになりました。還付される場合には、後日管轄の年金事務所から通知書が届き、還付請求書を提出することによって還付処理が行われます。還付される保険料は、会社負担分と従業員負担分の両方が会社へ返金されますので、退職した従業員へは会社から返金しなければなりません。

一方、健康保険料については、これまで通り、還付されることはありません。

従って、20歳以上60歳未満の方は、国民年金の強制加入者であることから、再就職しない場合は同月内に国民年金に加入することになり、退職後、厚生年金保険料が還付になる可能性が高くなります。退職時に厚生年金保険料を徴収しておくか否かは、会社の裁量によるとされています。

実務的には、厚生年金保険料の還付が不確実であること、また、健康保険料については、これまで同様還付されることがないことから、本人からは徴収しておいて、年金事務所から該当通知があった場合に厚生年金保険料の還付分のうち、当該退職者が負担した分を返金するかたちで、運用されるのがよろしいのではないかと思います。

種 類 年 齢 喪失後の同月区分 保険料の還付
厚生年金 20歳以上60歳未満 国民年金1号
国民年金2号
国民年金3号
20歳未満、60歳以上 再就職し厚生年金加入
60歳以上国民年金任意加入
上記以外
健康保険

みくに労務管理事務所 社会保険労務士 児玉いずみ

ページの先頭へ戻る