新聞掲載記事平成29年10月

年金の振替加算

「年金の振替加算が支給漏れしていた」という報道がありました。「振替加算」とはどんな制度ですか。

「振替加算」とは、国民年金が強制加入となった昭和61年4月1日より前に20歳を迎えている人に対しての補填的な年金になります。生計維持のある、一定の条件を満たした夫婦のどちらかに加算される補填的な年金のため、一般的には加給年金と一緒に「家族手当」や「扶養手当」などと紹介されている事が多い制度です。

厚生労働省は、この振替加算が支給されていないケースが近年増加していることを踏まえ、振替加算の支給漏れ事案の総点検を行った結果、およそ10万6千人に対して約598億円もの支給もれがあったと発表しました。その中でも、夫婦のどちらかが共済年金を受給しているケースがおよそ10万1千人と9割を超えています。

振替加算について、具体的に主なケースで説明します。年上の夫に厚生年金と共済年金の合わせた期間が20年以上ある場合、夫の年金に定額部分が支給されると、妻の年齢が65歳になるまで、夫の年金に加給年金が加算されます。妻が65歳に達すると、夫に加算されていた加給年金が終了しますが、妻の年金に「振替加算」として加算されます。しかし、妻に厚生年金と共済年金の合わせた期間が20年以上ある場合、補填的な年金である「振替加算」は妻が65歳になっても加算されません。また、妻が年上の場合は夫に加給年金は加算されずに、夫の年金に定額部分が支給される時に、妻の年金に振替加算が加算されます。この場合も妻に厚生年金と共済年金の合わせた期間が20年以上ある場合、振替加算は加算されません。主なケースで説明しましたが、夫と妻の立場が逆のケースでも同様の制度となります。

受け取っている年金に振替加算が加算されているかを確認するには、今年の5~6月に日本年金機構から送られている「年金額改定通知書」の振替加算額の欄をご覧ください。その欄に金額が明記されていれば振替加算が正しく加算されています。

一方、今回の総点検により振替加算が支給漏れしている場合の対応ですが、日本年金機構は、「11月上旬に対象者へ通知を送付して、11月15日に支給漏れの分を支払う」としています。この方たちは新たに手続きをすることなく支給漏れの振替加算を受給することができます。しかし、支給漏れの対象者がすでに死亡している場合や、支給漏れ対象者に新たな確認事項が必要な場合は別途通知されるとのことです。

今回の支給漏れの原因は主に日本年金機構と共済組合の連携不足と発表されていますが、年金制度は何度も法改正を経て、大変複雑な制度になっています。また、今回は主なケースで説明しましたが、年金は人によってそれぞれ異なります。疑問に思うことがあれば年金事務所や社会保険労務士に相談することをお勧めします。

みくに労務管理事務所 須田めぐみ

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