新聞掲載記事平成30年6月
社会保険月額変更に年間平均
Q 当社は冬季に繁忙期を迎える業務です。社会保険算定基礎届の年間平均と同様な方法ができたと聞きました。詳しく教えて下さい。
給与計算や社会保険の手続きに従事している方ではないと聞きなれない言葉ですが、社会保険制度には保険料の算出や、厚生年金・健康保険の給付を受ける際の基となる標準報酬月額や標準賞与額があります。前者の標準報酬月額の決定には大きく分けると①取得時決定 ②定時決定 ③随時改定の3つがあり、健康保険では5万8千円から139万円までの50等級、厚生年金では8万8千円から62万円までの31等級に算出した給与額を当てはめ標準報酬月額を決定し次の改定までの間の加入者毎の保険料を決定してゆきます。ご質問のとおり10月から③随時改定にも②定時決定と同様の年間算定が利用できるようになります。
おさらいですが③随時改定となるのは、(1)固定的賃金に変動・給与体系の変更があった(2)変動月以後引き続く3月の各月の支払基礎日数が17日以上ある(3)変動月以後引き続く3月の報酬月額の平均が元の標準報酬月額に比べて2等級以上差が生じたことの3つの条件を全て満たした場合です。
したがって、改定前は繁忙期に合わせてたまたま固定的賃金の変更があり残業代を入れたら相当な給与額になったケース(例えば引越しして通勤手当の月額が増えた等)があれば③随時改定に該当し4カ月目以降保険料が上がりますが給与は繁忙期から外れると残業代が減り通常の給与に戻るため結果的には次の改定まで手取額が大幅に少なくなってしまうことが考えられます。
このような状況を回避するため年間算定は通常の月額変更の算定方法で算出した等級と給与改定月後3カ月とその前9ヶ月の12ヶ月の月平均額で算出した等級に2等級以上の差があり、業務の性質上繁忙期が例年発生することが見込まれる場合です。一例では収穫期を迎える農作業の加工業種や季節的に繁忙期を迎える商品の製造等があります。
実際に年間平均を使う場合には管轄の年金事務所長あてに具体的な業務内容と理由を書いて年間の報酬の平均で算定することの申立を行います。
さらに、標準報酬月額は厚生年金や傷病手当金等の給付額の基になりますので本人の同意が毎年必要となります。
従来の手続きに加えて一手間かかりますが、以上のような条件を満たす場合には加入者の同意を得ながらご検討いただくと良いでしょう。
みくに労務管理事務所 飯島明美
ツイート |
|