新聞掲載記事平成30年8月

年金の繰下げ受給

Q. 年金定期便が送られてきました。私は63歳から年金の受給ができる様ですが、63歳以降も仕事を続ける予定です。年金の受給開始を遅らせて、年金額を増やす方法があると聞いたことがありますが、どの様な制度なのでしょうか。

A. ご質問の様に、年金の受給時期を遅らせて増額した年金を受給することを「繰下げ受給」といいます。繰下げ受給ができるのは、65歳から受取ることができる老齢基礎年金と老齢厚生年金になります。あなたは63歳から65歳まで、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができるようですが、この65歳までに受給する特別支給の老齢厚生年金は、繰下げ受給をすることはできません。

繰下げ受給は65歳から1年以上の待機が必要で、66歳から70歳までの間に1か月単位で申し出をすることができます。増額率は1か月ごとに0.7%なので、66歳の8.4%から最大70歳になると42%にまでなります。一度繰下げ受給の申し出をした場合は、その増額率での年金額を一生受取ることになります。また、繰下げ受給は老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に、またはそれぞれ別々にすることもできます。

年金の繰下げ受給は増額率が大変魅力的ですが、注意点もいくつかあります。まず、繰下げ受給は66歳から可能なので、66歳になるまでに遺族年金などの他の年金の受給権がある場合は、繰下げ受給はできません。それから、繰下げ受給をするために年金の受給を待機している間の、66歳から70歳まので間に他の年金が発生した場合は、その時点での増額率の繰下げ受給にするか、または65歳からの年金を増額なしに遡ってまとめて受給するかのどちらかになります。また、年金に上乗せされる加給年金と振替加算がある場合には、繰下げ待機中は受け取れず、繰下げによる増額の適用もありません。なお、65歳以降も厚生年金に加入しながら働く場合、年金に停止額がある場合があります。その場合、年金の停止相当額は増額の対象外になります。

最後に年金を受給総額で考えたいと思います。繰下げ受給した場合と、65歳から本来の額で年金を受給した場合、受給した総累計額が逆転するのは、繰下げ受給をしてから11年11カ月後になります。つまり、70歳で繰下げ受給をした場合と繰下げ受給をせずに65歳から増額のない本来の年金額で受給した場合では、繰下げ受給した総累計額の方が多くなるのは81歳11カ月という事になります。加給年金や振替加算が受給できる方は逆転する年齢がさらに遅くなります。

何歳まで年金を受給できるかはその時になってみないとわからないですが、65歳からのライフプランを考えて、受給する年金の受け取り方を選択してみてもよいかもしれません。

みくに労務管理事務所 須田めぐみ

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